空調機器だけに頼らず、太陽や風など
自然の力を利用して快適に暮らす設計手法
パッシブデザイン
1. 日本の家は寒い!
室温基準なく世界から遅れる日本
世界では、“室温”が住む人の健康に大きな影響を与えることが常識となっています。そのため、欧米諸国では室温に対する規制が当たり前になりつつありますが、日本ではこのような法令は見当たりません。
つまり、私たちの国では、家の温熱環境が過去から今に至るまでずっと軽視されてきたということです。その結果、世界的に見ても「日本の家はとても寒い」と言われており、外国の方が日本に来て、家の寒さに驚くという話は珍しくありません。
ここでいう日本の「省エネルギー基準」は欧米での1988年基準以下のもので、現在新築されている日本の家の6割以上がその基準すら満たしていません。
■世界の住宅における断熱性能の基準
イギリス::住宅における全室の温度の最低基準を 18°Cとしている。 |
アメリカ:全米50州の内24州でアルミサッシ使用不可。 |
ドイツ:室温19°C以下は「基本的人権を損なう」と規定している。 |
中国:日本より平均的な窓の性能ははるかに高い。 |
WHO:住む人の健康を守るために安全でバランスの良い室温は18°Cと強く勧告。 |
■世界の平均室温
ロシア:24.0°C | ドイツ:17.0°C |
アメリカ:20.0°C | フランス:16.8°C |
チェコ:18.5°C | オランダ:16.0°C |
デンマーク:18.4°C | イギリス:15.2°C |
イタリア:17.3°C | 日本:10.0°C |
寒い家は健康に悪い 〜ヒートショック〜
ヒートショックとは、温度差が原因で生じる血圧の急激な変化が引き起こす健康被害のこと。日本では、ヒートショックが代表的な原因とされている「入浴中事故」で、交通事故死者数の4倍以上の方が亡くなっています。
そして、世界的にみても日本はヒートショック発生大国。日本の家の寒さが健康被害に現れているといわれています。
■主な国の高齢者の溺死死亡率(人口10万対)
「家を建ててから後悔したこと」で多いのは…
業界専門誌が注文住宅を建てた経験のある人に実施したアンケートによると、新築後10年以内の人の約40%、20年以上経過した人の実に70%が「寒い / 暑い、風通 し、暗さ、結露」に対して後悔していると答えました。また、住宅建材メーカーのアンケートで も、こだわっておくべきだった性能として、「日当たり」「結露」「断熱性」など温熱関連の項目が上位を占めました。
以上のように、住んでからの体感も、健康面からも、日本の多くの家は決して理想的とは言えません。間取りや広さやデザインなどの目に見えるものはもちろん大切ですが、温熱環境など目に見えないものもデザインと同じかそれ以上に大切。つまり「デザインと性能が両立していなければ良い家じゃない」というのが当社の家づくりの考え方です。
そして、当社ではその考え方を実現するために、「パッシブデザイン」という設計手法を用いた家づくりを取り入れています。
2. パッシブデザイン」とは何か?
自然の力や周辺環境と向き合う
パッシブデザインとは、建物のあり方そのものをしっかり考え、建物の周りにあるエネルギーをうまく活用したり調整したりすることによって、質の高い暖かさ・涼しさを実現し、同時に省エネになることを目指す設計手法のことです。
ちなみに“パッシブ”というのは「受動的な」という意味で、太陽や風の恵みを上手に取り入れて快適に暮らそうとする考え方です。一方で設備機器を使って暖かさや涼しさを得る方法を“アクティブ”と表現したりします。
省エネ・暖かさ「だけ」じゃない
省エネだけを目指すのであれば、例えば太陽光発電は非常に有効です。しかし、太陽光発電をつけたからといって「暖かさ」や「涼しさ」の質は向上しません。太陽光発電は単なる発電装置ですから当然です。
また暖房機器を思うまま贅沢に使えば「暖かさ」は得られますが、たくさんのエネルギーが消費されます。
一方でパッシブデザインは“建物そのもの”に様々な工夫をことで「暖かさ」や「涼しさ」を得ようとする考え方です。
機械設備に頼った場合よりも質の高い快適性とともに、健康面でのメリットも得られます。さらに、暖房・冷房に使うエネルギー消費量は大きく減り、それに比例して光熱費も安く抑えられます。この4つのメリットを住む人に感じていただきたいというのが我々がパッシブデザインに取り組む理由です。
3. 冬「暖かく」、夏「涼しい」家にする方法
冬の暖かさを実現するためのポイント 〜冬のパッシブ〜
パッシブデザインでは、建物の工夫によって冬の住まいを暖かくしようとする時、次の2つが何よりの基本になります。
1)建物の中にある熱をしっかり守ること
これはつまり建物全体の「保温性能」を上げることです。 そのために壁・天井・床・窓の断熱仕様を考え、一定以上の気密性能を確保します。
2)できるだけたくさんの日射(太陽熱)を採り入れること
太陽熱で暖められた部屋の心地よさは格別です。いわゆる高断熱・高気密とパッシブデザインの最大の違いは、建物の性能の向上だけでなく日射などの周辺環境も考えるところです。
保温性を高めて
暖かさを逃がさない
太陽の熱を取り込んで
家の中を暖める
1)建物の中にある熱をしっかり守ること
これはつまり建物全体の「保温性能」を上げることです。 そのために壁・天井・床・窓の断熱仕様を考え、一定以上の気密性能を確保します。
保温性を高めて
暖かさを逃がさない
2)できるだけたくさんの日射(太陽熱)を採り入れること
太陽熱で暖められた部屋の心地よさは格別です。いわゆる高断熱・高気密とパッシブデザインの最大の違いは、建物の性能の向上だけでなく日射などの周辺環境も考えるところです。
太陽の熱を取り込んで
家の中を暖める
上記の2つが冬のパッシブですが、1の保温性能については、「窓」の性能が鍵を握ります。というのも、例え2で多くの熱を取り入れても、従来の家では逃げていく熱のうち48%が「窓」からなのです。そのため、窓の性能は最優先で考えていく必要があります。
夏の涼しさを実現するためのポイント 〜夏のパッシブ〜
パッシブデザインでは、建物の工夫によって夏の住まいを涼しくする時、次の2つが何よりの基本になります。
1)できる限り建物に日射熱を入れない(=日射遮蔽)
日射遮蔽の最大のポイントは窓です。窓から入る日射抑えないと“夏涼しい暮らし”は決して実現できません。そのためには庇や軒の位置や大きさを適切にし、日除け効果の高いアイテムを窓まわりに設置することがポイントになります。
2)風通しをよくする(通風に工夫する)
家の中の風の流れを考えながら窓の配置や大きさを決 めることが重要です。風通しの善し悪しは、夏だけではなく春や秋といった中間季の過ごしやすさも左右します。
1)できる限り建物に日射熱を入れない(=日射遮蔽)
日射遮蔽の最大のポイントは窓です。窓から入る日射抑えないと“夏涼しい暮らし”は決して実現できません。そのためには庇や軒の位置や大きさを適切にし、日除け効果の高いアイテムを窓まわりに設置することがポイントになります。
2)風通しをよくする(通風に工夫する)
家の中の風の流れを考えながら窓の配置や大きさを決めることが重要です。風通しの善し悪しは、夏だけではなく春や秋といった中間季の過ごしやすさも左右します。
冬と同様、夏においても家の中で最も熱の出入りが多いのが「窓」です。快適な家づくりをする上で、冬も夏も窓を考えることはとても重要だということが言えます。
ここでお気づきの方もいるかもしれませんが、冬と夏、両方に快適な家づくりを目指そうとすると、設計上対立してしまう部分があります。例えば、夏は優利な軒や庇が、冬には不利にはたらきます。
そのため、四季が豊かで夏暑く冬寒い日本(特に山梨)で一年を通じて快適に過ごすため、私たちは、様々な工夫を施します。
4. 知って得するパッシブデザインの知識
では、いったいどのようにして夏も冬も快適に過ごせる家づくりをすれば良いのでしょうか?この章では、「具体的に施主は何を意識すればいいのか?」という視点で、具体的な手法を掘り下げていきます。パッシブデザインでは、以下の5つを適切に建物に組み込みます。
1.断熱・気密 / 2.日射熱利用暖房 / 3.日射遮蔽 / 4.通風 / 5.昼光利用
この5つの中で、冬の暖かさと夏の涼しさに直結する3つ「断熱・気密」「日射熱利用暖房」「日射遮蔽」についてポイントをお伝えしていきます。
1. 「断熱・気密」の大切さ
断熱性と気密性を高めることは建物全体の保温性能を向上させ、様々なメリットを与えてくれます。
・少ない熱で部屋を暖めることができる(省エネ性)
・暖房していなくても室温が一定に保たれる(快適性、健康性)
・暖房している部屋と暖房していない部屋との温度差が小さくなる (快適性、健康性)
・窓、床、壁などの表面温度が高く保たれる(快適性)
【断熱性能がどれくらいかを見るには?】
建物全体の断熱性を表す指標にはQ値とUA値の2種類があり、どちらも数字が小さいほど断熱性が高いことを示します。
一般的に使われるのはUA値ですが、どちらが参考になるかと言えばQ値です。実はUA値は換気による熱の出入りを勘案していません。さらに、凸凹の多い家や1階と2階の床面積がかなり違う家などはQ値で見たほうが正確なのです。
Q値とUA値には、国およびHEAT20という団体が定めたランクがあり、その数値は8つの省エネ地域区分ごとに違います。
省エネ地域区分で分けられたエリアごとに値の水準があり、その基準は国およびHEAT20という団体が定めています。
当社が目指すのは、HEAT20のG1グレード。これは国の最高基準である「H28年基準」よりも甲府(6地域)でいうと30%、笛吹市(5地域)でいうと40%高い断熱性能です。
【気密性能がどれくらいかを見るには?】
気密性能C値とはどれくらい隙間が小さい家かを表す指標で、Q値やUA値と同じく高性能であるほど小さくなります。当社では一般的に高気密といわれる1.0未満(竣工時測定)を基準としています。これは延床面積100m²の家でいうと、家全体の隙間が0.01m²(手のひらの大きさ程度)ということになります。
2. 窓は自然のストーブ「日射熱利用暖房」
家の南側に窓をできるだけ多くの窓を設けて、日射熱を室内に採り入れて暖房に使うという設計技術があります。合言葉は「窓は自然のストーブ」です。
このフレーズを実感できる数字を紹介します。
冬の晴れた日に南の窓1m²に当たる日射熱は900Wほどです。そして、その熱が普通のペアガラスを通すと20%ほど減り、家の中に入ってくる熱は720Wとなります。一般的な掃き出し窓の大きさは3.6m²くらいなので、冬の掃き出し窓1箇所で約2600Wの熱が入ってきます。一方で、シンプルな電気ストーブの熱発熱量は1000W程度。まさに窓はストーブと言えるくらい家を暖めてくれるのです。
しかも、山梨県は県土のほとんどが日本でも日射量の多い地域に属しており、日射熱利用暖房を取り入れるのにとても適していると言えます。家を作るときは、窓からどれくらい日射熱を取り込めているかを確認してみましょう。
3. 窓からの熱をコントロールする「日射遮蔽」
上記とは逆に、夏の強い日差しを室内に入れないための「日射遮蔽(しゃへい)」は、夏期における快適と省エネを実現させるための基本中の基本です。
平均的な性能の建物でレースカーテンを引く程度の日除けをしている状況では、夏に室内に入ってくる日射熱のうち70%程度が「窓から」になっています。したがって、この対策を考えないと快適と省エネにつながる日射遮へいにはなりません。
ポイントは「庇や軒を考える」「窓の外側に日除け装置を設ける」です。これらは外観のデザインを決めることにもなるので、設計段階でしっかりと検討します。
すだれやシェードは昔からある日射遮蔽の知恵です。
庇や軒の設計も熱の出入りを大きく左右します。
当社のモデルハウスでも採用しているルーバー網戸。虫除けと日除けを兼ねたデザイン性も高い。
5. シミュレーションでわかる
パッシブデザインの計画において最も大切なのがシミュレーションです。シミュレーションをしっかり行うことで、間取りや素材と違って目に見えない家の性能を造る側と住む側が互いにしっかり理解し家づくりの成功確率を高めることに繋がります。当社では丁寧に時間をかけて次の3つのシミュレーションを行っています。
1)日照シミュレーション
3Dモデルを使って土地の日当たりを確認し、土地のどこに建物を建てればより多くの日射を取り込め、暖かい暮らしが実現できるかを検討します。さらに、プランが出来上がったら、建物に対する夏と冬の日当たりを確認します。
2)室温シミュレーション
無暖房、無冷房での室温をシミュレーションし、少ない空調で健康で快適に暮らせるかをチェックします。
3)光熱費シミュレーション
光熱費が抑えられることもパッシブデザインのメリットのひとつです。光熱費シミュレーションによって、建築コストだけでなく、光熱費も含めたトータルコストで家づくりをとらえることができます。
6. 健康な室温を実現するために
理想の温度は?
理想の温度は?国内外の様々な研究をもとにすると、快適で健康な暮らしのための目標室温は、冬で18°C以上、夏で28°C以下であると言えます。
これは、かなり高いレベルでパッシブデザインを取り入れたとしても無暖房、無冷房では実現困難な室温です。つまり、快音で健康に暮らすには空調設備が必要ということです。
空調設備もきちんと選ぼう
機器代と取付け工事代を足したイニシャルコストと、電気代や燃料代のランニングコストがどちらも安く、更には暖房・冷房・除湿の1台3役ができることから、エアコンの費用対効果は空調機器の中では最高といえます。
また、床下や小屋裏に設置することで、さらなる快適性と省エネ性を発揮することも可能です。
エアコン以外の暖房では、薪ストーブやペレットストーブが省エネ性や空間演出の面で優れていると言えます。
「後悔しない家づくり」のためには、施主様の知識も必要です。
家は一生もの。家づくりは一生ごと。「知らなかった」では後悔してもしきれません。
当社では、新しい住まいを考えている方に、正しい知識をつけて頂くための
「後悔しないための家づくりセミナー」を定期的に行なっております。
ぜひお気軽にご参加ください。
「後悔しない家づくり」のためには、施主様の知識も必要です。
家は一生もの。家づくりは一生ごと。「知らなかった」では後悔してもしきれません。当社では、新しい住まいを考えている方に、正しい知識をつけて頂くための「後悔しないための家づくりセミナー」を定期的に行なっております。ぜひお気軽にご参加ください。